【第31回】「自分でやってみる」佐々木英之さん/「やる気のエネルギーを信じる」白井良さん

さまざまな分野で活躍する方にお話をうかがうインタビュー「グローバル・コネクター®」。今回のゲストは、創業地の中国で意気投合して以来、二人三脚で会社経営に携わり、現在は大豆などを使った代替肉の開発や関連製品の製造・販売を手掛ける株式会社「Next Meats(ネクストミーツ)」で代表取締役を務める佐々木英之さんと共同創業者の白井良さんです。

 

 

 

 

木暮 中国に渡ったのは白井さんの方が早かったそうですね。

白井 中国のGDP(国内総生産)が米国を追い抜くという専門家の予想を「うのみ」にしたのが訪中のきっかけです。実際に北京オリンピックから10年間は目覚ましい発展をとげていきました。

 

木暮 起業する行動力もあった。

白井 日本の証券会社で中国のファンドも担当したことがありました。いろいろな会社が上場していく様子を間近で見ているうちに、自分でも会社を作りたくなりました。「アメリカンドリームの次はチャイナドリーム」という気分です。細かいことは気にしませんでした。当時から環境関連事業に興味があり、浄化作用のある「光触媒」という技術をホテルなどに売り込んでいきました。

 

木暮 佐々木さんとは?

佐々木 キッチンカーで飲食業をしていて、将来を考えていたころ、中国に渡っていた高校時代の友人が「面白い人がいる」と紹介してくれたのがきっかけです。中国の深センで白井と会ったところ、共通の知り合いがいるなど意気投合しました。中国語は分からなかったものの、面白そうだったのでそのまま12年も住み着いてしまいました。

 

木暮 引かれるところがあった。

白井 お互いの性格が対照的。コンビとしてうまく補い合っています。突っ走って激しく転ぶタイプの私に対し、佐々木は常に安定しています。ゼロから1を生み出すのが私で、彼はそれを発展させていくのが得意。

 

佐々木 不得意な部分が分かっており、パズルのように「はまる」感じです。白井は発想力があり、それを選別するのが私の役割です。

 

木暮 海外を目指すようになったのは?

白井 外国人が周りにいない田舎育ちで、海外は別世界。日本ならお金を稼げそうだけれども果たして海外でも同じようにできるだろうかと思うようになり、豪州や中国などへ旅行し始めると、1円でもいいから稼ぎたくなりました。

 

佐々木 海外は旅行する程度で、ひと旗揚げようとは思っていませんでした。ちょうど将来を模索していた頃に白井と知り合って今に至ります。本当に偶然です。

 

木暮 中国はどうでした?

佐々木 「面白そう」という好奇心だけで、特に情報収集もしないで乗り込みました。先入観もなく、気持ち的には「フラット」な感覚で住み始め、都会的だと思ったぐらいです。食事など環境の変化に伴うストレスも感じませんでした。

 

木暮 適応力が高かったのですね。白井さんも?

白井 住むことに抵抗感はありましたが「このカオス(混沌)はまぎれもなくチャンスだ」と思いました。大学に通い始めた当初は現地の人との接し方が分からず、「友達になれないかも」と不安でした。ただ、上下関係が無いのは気楽でもありました。彼らとは根本的に違う部分はあるのですが、こちらが折れたり向こうに合わせたりしているうちに、気付いたら生活にも慣れており、自分の順応力に驚きました。外国では主張をしないと「負け」です。存在意義がなくなるように、ビジネスでも主体的に進めないと自分がどんどん埋もれていき、相手にされなくなります。

 

木暮 留学した米国も言わないと分かってもらえない世界でした。黙っているのは損ですね。

白井 中国も似ています。言わないと消えていきます。自分の言葉で発言して仲良くなっていく必要があるでしょうね。

 

佐々木 言い方が身に着くにつれ、自然と主張できるようになりました。ビジネスでも通訳者に頼ると「壁」を感じます。下手でもいいから自分で話すことが大事です。

 

木暮 日本は「察する」文化。

佐々木 現地に合わせたやり方でないとうまくいかないこともあります。日本の方が上という態度を示す人もいて、違和感がありました。

 

白井 海外では忖度(そんたく)がありません。議論してぶつかり合ってでも理解を進めた方が生産性は高いのです。

 

木暮 日本の商談相手には忖度?

白井 使い分けが大事でしょうね。米国など8カ国以上に展開しており、現地での振舞いや立ち回り方に気を付けてきた自負はあります。

 

佐々木 日本での経験も折り込んだ上で、海外展開を進めていきたいです。

 

木暮 海外はスピード感が違います。

 

白井 稟議(りんぎ)書はおろか、ハンコ文化もありませんし、商談に臨んだ決裁権者が決断する。中国では「いったん持ち帰ります、検討します」はご法度。笑われます。

 

佐々木 「出張までしてはるばるやって来たのに、なぜこの場で決めないのか」と。もったいないですよね。

 

木暮 海外進出を難しく捉えている日本の方は少なくない。

白井 語学力が生かしにくい環境という島国のハンデはあるかもしれません。ただ、「やりたい」というエネルギーがあれば、どこでも切り込めるだろうと思います。「できないから」よりも「やりたいから」という気持ちが必要です。

 

佐々木 中国に着いた時は「ニーハオ」程度しか知りませんでした。言葉の壁を感じるよりも、現地を知ろうとか、現地の人と関わるとか、どれくらい動けるかだと思います。当初はその国の特徴や事情が分かりません。納期の遅れに不満を伝えても一向に改善されない、という経験など繰り返しながら、相手とどう付き合うかを学びました。

 

木暮 失敗もしてきた。

白井 無言ではいられない性格で、初めて乗った中国の電車内で足を踏まれ、とっさに「謝謝(日本語でありがとうの意)」と言ってしまいました。ビジネスに関しても、自分の見当違いだったケースは全体の95%ぐらいありました。

 

佐々木 注文した食べ物が届かないことや、抗議の中国語が通じないことは数えきれないほどです。

 

木暮 苦労しても海外ビジネスは楽しい。

白井 便利な技術やサービスを皆さんに使ってもらいたい。損得勘定ではなく、世の中に価値を示すことで、世界の77億人が喜ぶ結果につながります。国境を無くすような仕事をしている行為そのものがうれしく、使命感を持って取り組んでいます。

 

佐々木 国が違えば文化も考え方も違うから面白い。環境問題への取り組みというミッションを日本だけでなく、世界規模で考えていきたいです。(おわり)

 

 

 

 

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